デジタル遺産・デジタル遺品の相続を、日本の法律から正しく理解する

暗号資産やネット口座、SNSアカウントは死後どうなるのか。民法上の取り扱いと、ご家族が困らないための生前準備をわかりやすくまとめました。

デジタル遺産・デジタル遺品は相続できるのか

結論からお伝えすると、財産的な価値を持つデジタル遺産(暗号資産、ネット銀行・ネット証券の口座、電子マネー残高など)は、原則として相続の対象になります。日本の民法882条は「相続は、死亡によって開始する」と定め、民法896条は「相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。これを包括承継といい、亡くなった方の財産は、原則としてプラスもマイナスもまとめて相続人へ引き継がれます。

一方で、民法896条の但書は「被相続人の一身に専属したもの」、つまりその人個人にしか帰属しない権利は相続の対象外と定めています。多くのSNSやメールのアカウントは、利用規約上「譲渡できない・一身専属」とされており、原則としてそのまま相続することはできません。同じ「デジタル遺品」でも、財産的価値の有無によって扱いが分かれる点が大切なところです。

「デジタル遺産」と「デジタル遺品」の違い

どちらも法律用語ではなく、実務上の呼び分けです。一般に「デジタル遺産」は、ネット口座や暗号資産のように相続財産となる金銭的価値のあるものを指します。これに対して「デジタル遺品」は、スマートフォンの中の写真・動画、SNS、クラウド上のデータなど、必ずしも金銭的価値を持たないものまで含めた、故人のデジタル上の持ち物全般を指すことが多いです。

専用の法律はまだない

日本には、デジタル遺産だけを正面から規律する専用の法律は、今のところ存在しません。相続の基本ルール(民法)と、各サービスの利用規約、そして個別の判例の積み重ねによって取り扱いが決まっているのが現状です。そのため、後述する生前の準備がとても重要になります。

資産ごとの一般的な取り扱い

  • 暗号資産: 国内取引所(取扱事業者)に預けている暗号資産は、所定の相続手続きによって取得できるのが一般的です。財産的価値があるため、相続財産に含まれます。

  • ネット銀行・ネット証券: 通常の預貯金や有価証券と同様に相続の対象です。ただし通帳や郵送物がなく、口座の存在自体が見つけにくい点に注意が必要です。

  • 電子マネー・ポイント・マイル: 残高は財産的価値を持ち得ますが、相続できるかどうかや手続きは、各サービスの規約によって大きく異なります。失効や承継不可の扱いも少なくありません。

  • SNS・メールアカウント: 多くが一身専属・譲渡不可とされ、原則として相続できません。多くの場合、できるのは規約に沿った削除や追悼アカウントへの移行などです。

大手サービスの「故人向け」機能

海外の大手サービスには、死後を見据えた設定があります。あらかじめ本人が設定しておくことで、ご家族の手続きが大きく楽になります。

  • Apple のデジタル遺産(故人アカウント管理連絡先): 信頼できる人を最大5人まで指定でき、本人の死後、写真やメッセージ、バックアップなどのデータへアクセスできるようになります。アクセスには専用のアクセスキーと死亡証明書が必要で、承認後の利用期間には期限(おおむね3年)が設けられています。

  • Google のアカウント無効化管理ツール: 一定期間アカウントが使われなかった場合に備え、最大10人まで通知先を指定し、データの共有や削除の希望を設定できます。無効と判断するまでの待機期間も選べます。

ご家族が困らないための生前対策

デジタル遺産で最も多いトラブルは「存在に気づかれない」「ログインできない」というものです。次の3点を、元気なうちに整えておくことをおすすめします。

1. アカウントの棚卸し: 金融系(ネット銀行・証券・暗号資産)を中心に、サービス名と利用の有無を一覧にしておきます。

2. エンディングノートの活用: ログイン情報や口座の所在、データの削除希望などを書き残します。ただしエンディングノートには法的拘束力がない点に留意してください。

3. 遺言書の作成: 財産的価値のあるデジタル遺産の承継先や分け方は、法的効力のある遺言書(特に公正証書遺言が安心です)で定めておくと、相続人同士の争いを防ぎやすくなります。暗号資産はウォレットの所在や鍵の保管場所の伝え方も検討しましょう。

まとめ

財産的価値のあるデジタル遺産は相続できますが、アカウントの多くは一身専属で引き継げません。専用法がない今だからこそ、棚卸し・エンディングノート・遺言という生前準備が、残されるご家族への何よりの配慮になります。

Afterlife AI™ がお手伝いできること

Afterlife AI™ は、オーストラリアを拠点とする、本人の同意(コンセント)にもとづくデジタルレガシーのためのサービスです。ご本人が生きているあいだに、自分の意思で記憶や人となりを残し、誰に、いつ、どのように引き継ぐかを決めておけます。その取り決めは Executor Lock™ によって守られ、本人が定めた内容が尊重されます。最初のペルソナづくりは無料で始められます。

Afterlife AI™ は、エンディングノートや遺言を置き換えるものではなく、それらを補う存在です。法的な相続手続きは引き続き遺言や正式な書面で整え、Afterlife AI™ は「想いと人となりを、同意のもとで遺す」役割を担います。両方を組み合わせることで、ご家族にとって心強い備えになります。

よくある質問(FAQ)

デジタル遺産は相続の対象になりますか

暗号資産、ネット銀行・ネット証券、電子マネー残高など財産的価値のあるものは、民法896条の包括承継により原則として相続の対象になります。一方、SNSやメールのアカウントは一身専属・譲渡不可とされていることが多く、原則としてそのまま相続することはできません。

故人のスマホやSNSアカウントはどうすればよいですか

アカウントの多くは相続できないため、できることは規約に沿った削除や追悼アカウントへの移行などが中心です。Apple や Google の故人向け機能を本人が事前に設定していれば、ご家族のアクセスや手続きが進めやすくなります。

暗号資産は相続できますか。手続きはどうなりますか

国内取引所に預けている暗号資産は、相続手続きを経て取得できるのが一般的です。ただし、ウォレットの所在や鍵の保管場所がわからないと事実上引き継げないため、遺言やエンディングノートで所在の伝え方をあらかじめ決めておくことが重要です。

エンディングノートに書けば遺言の代わりになりますか

なりません。エンディングノートには法的拘束力がないため、財産の承継を確実にしたい場合は、法的効力のある遺言書(公正証書遺言が望ましい)を別に作成する必要があります。エンディングノートは情報共有や希望を伝える補助として活用しましょう。

デジタル遺産だけを対象にした専用の法律はありますか

2026年時点で、日本にはデジタル遺産のみを正面から規律する専用法はありません。相続の基本ルール(民法)、各サービスの利用規約、判例の積み重ねによって取り扱いが決まります。だからこそ生前の準備が大切です。

何から始めればよいですか

まずは金融系アカウントを中心とした棚卸しから始め、エンディングノートに情報を整理し、財産的価値のあるものは遺言書で承継先を定めるのがおすすめです。個別の事案は、弁護士や司法書士にご相談ください。

免責事項

本ページは一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士・司法書士にご相談ください。